七五ブログ

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はじめまして

名古屋市瑞穂区に在る本屋・七五書店のブログです。

現在こちらでは雑誌・児童書担当が、読んでみて皆さまにもおすすめしたいと思った作品の紹介をしております。
基本的にネタバレはなしです。

主に「小説・ノンフィクション」「コミック」「児童書」に分類しております。
ブログ右手(PC版では)のカテゴリ欄もどうぞご活用ください。

場合によっては店頭在庫がないこともございます。
ご了承のほどお願いいたします。

新刊・入荷情報などは、<リンク/お知らせ>にあるTwitter、Facebook、
Instagramにて行っております。ご参照ください。

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# by 75bs | 2019-12-31 23:59 | はじめまして | Comments(0)

『書店ガール』最終巻

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『書店ガール 旅立ち』最終(7)巻
碧野 圭・著 / PHP研究所 PHP文芸文庫 700円+税
中学の読書クラブの顧問として、生徒たちのビブリオバトル開催を手伝う愛奈。故郷の沼津に戻り、ブックカフェの開業に挑む彩加。仙台の歴史ある書店の閉店騒動の渦中にいる理子。そして亜紀は吉祥寺に戻り……。
それでも本と本屋が好きだから、四人の「書店ガール」たちは、今日も特別な一冊を手渡し続ける。

すべての働く人に送る、書店を舞台としたお仕事エンタテインメント、ついに完結!
[出版社Website作品紹介より]
2012年に改題・文庫化されたこの物語を初めて拝読し(改題前の初版は2007年)、2015年4月にテレビドラマ化されたときには、毎週家人とワクワクしながら視聴をし(見ている目的はそれぞれ違ったと思いますが)発売毎に楽しみにしていた物語がついに完結しました。

本屋に従事しているからと言う理由はもちろんですが、1巻1巻拝読するたびにその時々の世相とともに変化・成長していく登場人物の皆さんの働き方、生き方にエネルギーを分けていただいてきたように思います。

昨今あちらこちらで行われるようになったビブリオバトルについてや、よく見かけるようになったブックカフェ(あ、弊店も一応その部類なのかもしれません・・・)のこと、そして現実にも起こる「え!? あのお店が?? ウソでしょっ!」と、思わず驚いてしまうほどの有名書店の閉店についてなど、相変わらず厳しいと言われる現在の本屋・出版業界について鋭く、愛情を持って変化していく様を描き切ってくださっています。

本屋業でなくても、仕事と家庭の両立に悩むかたや、自分の居場所について悩むかたなどへのエールにもなっていますので、いろいろと余裕がないとなかなか読書などできないとは思いますが、少し息をついて、またあらためて歩み始めるための一冊としてもお勧めしたい一冊です。

 (M)
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# by 75bs | 2018-09-12 12:43 |   著者別/碧野 圭 | Comments(0)

『国宝』

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『国宝』上・下巻
吉田修一・著 / 朝日新聞出版 各1500円+税
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ!
極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。
作家生活20周年記念作品として放つ渾身の大作。(上巻「青春篇」作品紹介より)

鳴りやまぬ拍手と眩しいほどの光、人生の境地がここにある。
芝居だけに生きてきた男たち。
その命を賭してなお、見果てぬ夢を追い求めていく。
今年最高の感動を届ける役者一門の大河小説(下巻「花道篇」作品紹介より)
[ともに出版社Website作品紹介より]
国技と言われる相撲の世界でも、今では外国籍力士の皆さんがご活躍されていますが、歌舞伎の世界は新しい芸風を取り入れつつも、今なおほぼ世襲制で伝統芸を受け継ぎ続けてますね。

子どもの頃は隈取された顔や誇張された動作の印象は強くても、その芝居の良さなどわからずに敬遠気味でしたが、舞台を初めて観劇したとき、役者の皆々さまが繰り広げる計算され洗練さつくした芸に圧倒され、心が打ち震え、諸々をやりくりして御園座(名古屋にある劇場)へと足を運んだことを覚えています。

五代目坂東玉三郎氏
片岡孝夫(当代・十五代片岡仁左衛門)氏
五代目中村勘九郎(故・十六代中村勘三郎)氏
五代目坂東八十助(故・十代目坂東三津五郎)氏・・・

この本を拝読しながら、上記の皆々さまが揃ってご活躍されていた頃に通っていたのだなぁとも思い出しました。

冒頭での肉迫した極道世界の描写、舞台が歌舞伎界へと移ってからの芸道の内に秘められているストイックさ、集中力、情熱、狂気、自己に厳しく律する性格や生き方を通して、心の奥底から震えてくるような歌舞伎の幽玄的な美しい世界を創り上げていく人生物語には、単にもう衝撃的などころか、あっという間に心をつかまれてしまい、惹きこまれ、気づくととめどなく涙があふれ、嗚咽してしまったほどです。
(連載掲載新聞を取っていたら・・・と、定期購読している新聞が地元のものであることもちょっと悔やんだくらいでして。。)

自分も、ほんの少しかじったことのある舞台の世界へと戻りたくなりました。
舞台に潜んでいるのは狂気か、狂喜か・・・もしかしたら狂嬉なのでしょうか。

役者が役者をやめられないように、何かを突き詰めていくということにおいては、どんな世界にでも止められない情動が潜んでいるのかもしれません。

作品紹介にもあるように、きっと人生(舞台)での境地をご堪能いただけるかと思います。

弱冠ですが、上巻のみサイン本をご用意しております。

 (M)



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# by 75bs | 2018-09-07 12:20 | 【おすすめ/小説等】 | Comments(0)

『トワイライト』

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『トワイライト』
西本ろう・著 / プランタン出版 フランス書院 Canna comics 700円+税
「俺の為にセックス覚えたんだろ?」

家にも学校にも居場所がなく、いつも一人で過ごしている高校生の陽平。
そんな時、同級生でサッカー部エース・稜と出会い、二人は次第に惹かれ合うが…。
ある事故を機に、二人の関係は大きく変化してしまう事に。
それは、数年に及ぶ歪んだ純愛の始まりだった――。

"家事、送り迎え、そしてセックス。稜の望む事は何だってする――すべては、稜と一緒にいるため"
ストーリーテラー・西本ろうデビュー作。
[出版社Website作品紹介より]
デビュー作ということで、荒けずりっぽさも多少はありますが、躍動感や色気をとても感じる魅力的な作画なうえ(エロ度も堪らなくいいです。)、登場する人たちひとり一人が魅力的で、それぞれの心の機微も見事な筆致で描かれているので、主役の二人の「両片想いの切ない純愛」がさらに切なく感じるとともに、ラストには温かさに包まれるので、ついつい読み返したくなります。

試し読みは → コチラ


 (M)
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# by 75bs | 2018-09-05 12:46 | 【おすすめ/BL・百合】 | Comments(0)

『不在』

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『不在』
彩瀬まる・著 / KADOKAWA 1500円+税
愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る。野心的長篇小説!

長らく疎遠だった父が、死んだ。
「明日香を除く親族は屋敷に立ち入らないこと」。不可解な遺言に、娘の明日香は戸惑いを覚えたが、医師であった父が最期まで守っていた洋館を、兄に代わり受け継ぐことを決めた。

25年ぶりに足を踏み入れた錦野医院には、自分の知らない父の痕跡が鏤められていた。
恋人の冬馬と共に家財道具の処分を始めた明日香だったが、整理が進むに連れ、漫画家の仕事がぎくしゃくし始め、さらに俳優である冬馬との間にもすれ違いが生じるようになる。

次々現れる奇妙な遺物に翻弄される明日香の目の前に、父と自分の娘と暮らしていたという女・妃美子が現れて――。
愛情のなくなった家族や恋人、その次に訪れる関係性とは。気鋭の著者が、愛による呪縛と、愛に囚われない生き方とを探る。
喪失と再生、野心的長篇小説!
※電子書籍特典、著者直筆のメッセージつき!
[出版社Website作品紹介より]

現在の世の中を扱った作品というものは、つい自分に投影して、どうしても冷静に読めなかったりしてしまって少し困ることもあるのですが・・・。

「愛憎」と言う言葉が読んでいるときにふと思い浮かんできました。
家族間などに起こり得るこの感情は、文字どおり相手を愛しているのか、はたまた愛するがゆえに思うようにならぬことで憎しみすら覚えてしまうのか、その境目はとてもあいまいで、自分自身でも持て余してしまうとても扱いにくい感情ですが、きっとどなたの心の奥に潜んでいるものだと思います。

愛はなくなっても情が残るとか、憎んでいるはずなのに離れられないなど、人と人との関係性は傍から客観的に見るより一筋縄ではいかないものです。

自分を培う「もの(経験、想い、感情など)」としっかり向き合わずにやり過ごしてきてしまうと、「大人」と言っていい年頃になっても、いつまでも中身は愛情不足の「子ども」のままで、佳きにつけ悪しきにつけ、幼少時に刻み込まれ体験が連鎖反応を起こすことや、絵に描いたような「ハッピーエンド」が想像しがたい現状を、誇張することなく的確に書き表しつつ、作品内では「父親の遺品整理」でしたが、自分自身のこれから(未来)を何ものにも囚われないために、さまざまを整理することで自分にとって本当に大切な生きかたを見つけ、切り拓いていくことについての可能性などの、新しい形の人間関係の道しるべを提示されているようにも感じました。

家族や友人、愛しい人との間柄で、ふと自信がなくなっているようなとき、もしかして向き合うことで傷ついたりするのではと、少し恐さを感じてしまうかもしれませんが、そんな心の想いもふと解き放つきっかけになる物語ではないかと思います。

 (M)


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# by 75bs | 2018-08-30 12:24 | 【おすすめ/小説等】 | Comments(0)

『家庭教室』

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『家庭教室』
伊東歌詞太郎・著 / KADOKAWA 1300円+税
伊東歌詞太郎 小説家デビュー作!

2012年からネット動画投稿を開始、力強い歌声とメッセージが支持を集め、2014年にはメジャーデビューを果たしたシンガー・ソングライター 伊東歌詞太郎。
その歌詞太郎 初の小説となる『家庭教室』は家庭教師をしている大学生・灰原 巧を主人公に、彼が家庭教師として訪れた家族・子供が抱える問題に真摯に向かい合い、解決していく姿をオムニバス構成で描いた作品です。
歌詞太郎氏の楽曲同様、子供たちが抱える問題や、その心の機微を瑞々しく表現し、10代を中心に多くの読者から共感を集める内容となっています。
[出版社Website作品紹介より]

2011年、某動画投稿サイトに歌唱動画を投稿以来、抜群な歌唱力とメッセージ力で(もちろんトレードマークとなっている狐のお面も。)人気を博し、現在3枚のアルバムをリリースされている伊東氏が、その想いをまるで聴き手の皆さんへと声量溢れる澄み切った歌声と同様に素直でストレートに問いかけている、そんな心を掴まれるデビュー作です。

東京を舞台に、成人したての大学生の視点から、家庭教師として派遣される先で出会う現代を生きる10代後半の子どもたちのさまざまな問題が、その目線(抱えるもの)に合わせて真摯に描き出されていて、一つ一つの物語の中にいくつもの気づきの言葉が投げかけられつつ、生きていくこと、死というもののことなどに対してそれぞれの立場からの見解として伊東氏の想いが読みやすい言葉で綴られ、投げかけられています。

同じ年頃の皆さんにはもちろん、昔は子どもだったはずの大人の皆さんの心にも、きっと響いてくるものがあるのではないかと思います。

食べものについての件もいくつかあって、それがまた食への興味をそそり、お腹が空きはじめた夜中などに読んでしまうとちょっとだけ困るかも。(笑)

MV用のイラストレーションをご担当されていらっしゃる優しく温かみのある印象深い画風であちらこちらでもコラボレーションをされているイラストレーター・みっ君氏による装丁・扉デザイン・イラストも、読む前も心に温かみが感じられますが、読了後に改めて拝見すると胸にグッとこみ上げてくるものがあると思います。

個人的には、灰原くんに家庭教師先をあっせんする人物もとても気になる方なので、もう少しこのシリーズを読んでみたい思いもあるのですが、とにかく年間1000冊以上も読破したご経験もあるほど本好きな伊東氏が描く次回作がとても楽しみです。

試し読みは → コチラ

 (M)
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# by 75bs | 2018-08-29 12:55 | 【おすすめ/小説等】 | Comments(0)

『波の上のキネマ』

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『波の上のキネマ』
増山 実・著 / 集英社 1850円+税
父から小さな映画館を継いだ俊介は、創業者の祖父の前半生を調べ始める。
祖父は若い頃、脱出不可能と言われた場所で働き、その密林の中には映画館が…。
驚きと感動の長編小説。 [出版社Website作品紹介より]
コチラの作品、まずは絵本「うきわねこ」などの優しく素敵な画風の牧野千穂さんが描き出された映写機にパッと目を惹かれます。

著者さまは、中部地方でもテレビで放映されている「ビーバップ!ハイヒール」や「探偵ナイトスクープ」の構成もご担当されている増山氏。

だからでしょうか、増山さんの紡ぎだす文章は場面のイメージがとてもしやすいのです。選び抜かれた言葉の一つ一つはとても知的で、読み進めていくうちにどんどん惹きこまれ、一つの大河ドラマを見ているかのようにも感じられます。

かと言って、映像化して欲しいのかと問われたとしたら、少し答えに困るのですが、一番いいのは読み手の方がそれぞれの心の中にある原風景をもとにイメージを想起していただくことではないかと思うのです。
(でも、イメージにぴったりと当てはまる配役であれば拝見したい気も・・・。)

映画館が舞台ということで、古き良き名画も数多く出てきます。
なのでお読みいただくと懐かしく感じられる方も、初めて聞く昔の映画に興味を抱かれる方もきっといらっしゃると思います。

脱出不可能の地での主人公のお祖父さまたちの様子は、手に汗をも握ってしまうほど凄絶で、驚きの連続には様々なことを考えさせられもします。そしてラストには心にジワっと熱くなるものを感じられるのではないでしょうか。
私は、その地にも足を運んでみたくなりました。

さまざまな文化が斜陽していく現在。

過去を見極めることが、未来へ繋がる第一歩であることをも気づかせてくれる、そんな一冊です。

 (M)
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# by 75bs | 2018-08-28 12:29 |   著者別/増山 実 | Comments(0)

『呪術廻戦』

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『呪術廻戦』
芥見下々・著 / 集英社 ジャンプコミックス 400円+税
類稀な身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁は、病床に伏せる祖父の見舞いを日課にしていた。
だがある日、学校に眠る「呪物」の封印が解かれ、化物が現れてしまう。
取り残された先輩を救う為、校舎へ乗り込む虎杖だが!?[出版社Website作品紹介より]
久しぶりに表紙に、それも背表紙に呼ばれた作品を。

このごろジャンプコミックスの若さ溢れる元気な勢いは、体力が減退の一途をたどる私にはまぶしすぎる存在になりつつあったのですが、つい追加発注した分の入荷されてきた山が目に入り、つい手が伸びてしまいました。

王道という言葉だけでは括れない物語の勢いの中から作者の熱い想いがガンガン伝わるほどの読み応えなうえ、まだまだ伸び代もたくさんありそうなので年甲斐もなくワクワクさせられてます。

試し読みは → コチラ

次巻は9月4日初内予定です。

(M)
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# by 75bs | 2018-08-24 12:29 | 【おすすめ/コミック】 | Comments(0)

『朝鮮大学校物語』

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『朝鮮大学校物語』
ヤン ヨンヒ・著 / KADOKAWA 1500円+税
もうひとつの〈北朝鮮〉を舞台に描く、恋と挫折、本当の自由をめぐる物語

「ここは日本ではありません」
──全寮制、日本語禁止、無断外出厳禁。大阪下町育ちのミヨンが飛びこんだ「大学」、朝鮮大学校は、高い塀の中だった。東京に実在するもうひとつの〈北朝鮮〉を舞台に描かれる、恋と挫折、そして本当の自由をめぐる物語。
映画「かぞくのくに」「ディア・ピョンヤン」の監督が自身の体験をもとに書き下ろす、初の小説。[出版社Websiote作品紹介より]

この物語は、主人公である学生たちが私より少し年上な設定だったので、読みながら子どものころからのさまざまな記憶もよみがえってきました。

学生のころ、近くに朝鮮中高級学校があったので通学時には制服チマチョゴリを着た学生さんともすれ違ったりしましたが、知っているようでほとんどわかっていない「隣の国」を背負いながら暮らす彼らのことは、大変申し訳ないのですが不思議な存在でもありました。

そして、その「申し訳ない」と思ってしまう気持ちにも驕りがあるのだと気づかされ、無意識に刷り込まれている自分の中の差別の芽に恥じ入るばかりです。

人種がどうとか関係なく、友だちはただただ友だちなだけだった子どものころ・・・。

いつから相手の国籍だの、性癖だのと周りからとやかく言われて考えてしまうようになったのだろうか。

3、40年ほど前に比べれば多少は改善されているかもしれないけど、自分たちよりも前の世代の人たちは、時代背景とともに刷り込まれてきた差別の意識と目というものがまだ根強く残っているだろうとも思います。

「そんなものは関係ない。」
そう言いきれなかったころの自分は、まだまだいろんな意味で未熟だったんでしょう。

社会に出てから知り合う機会があった日系・在日それぞれの二世である友人たちは、「血」は祖国のものでも、「言語」「文化」「心」は誕生地であり在住されてきたそれぞれ国の人そのもので、初めはそれに驚いてしまいましたが、考えてみるとそれって不思議だけれど驚くことではなく、複数の国民性を持ち得る豊かな基盤で育ってきた感性のはず。

この物語の主人公・ミヨンが、青春を謳歌できると思っていた地で目の当たりにする、それぞれの国の持つ偏見と差別、分断されている祖国の在り方などに翻弄されつつ、時代を生き抜き、自由のある生き方にたどりつかんと今もきっと模索している30余年の月日がリアルに描かれていて、読後には知らなかった大切なこと、自分は自分なのだということなどを、それぞれの胸の内へと静かに指し示してくれると思います。

 (M)



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# by 75bs | 2018-08-21 12:36 | 【おすすめ/小説等】 | Comments(0)

『四十歳、未婚出産』

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『四十歳、未婚出産』
垣谷美雨・著 / 幻冬舎 1500円+税
未婚の母になったら苦労するに決まってる。でも、子供を産む、最初で最後のチャンスだ。だったら……。

四十歳を目の前にして思わぬ妊娠に揺れる、旅行代理店で課長代理として働く優子。
お腹の子の父親は28歳のイケメン部下・水野で、恋愛関係にあるわけでないし、本人にはどうしても言えない。偏見のある田舎の母親やパワハラ上司、不妊治療に悩む同期にも、いえない。しかし、どこからか優子の妊娠の噂を聞きつけた水野とその彼女があれこれまとわりついて嗅ぎ回る。
女は出産したら一人前には働けないというパワハラ上司からも意地悪とされ、四面楚歌。

産むのか、産まないのか、言うのか、言わないのか。シングルマザーで仕事はどうするのか……。
結論が出せずに悩む優子だったが、田舎の同級生やかつて不倫していた上司、兄のブラジル人妻、仕事と子育てを両立する同僚など、少しずつ味方が現れて、揺れながらも、気持ちは固まっていく。

痛快で優しい、すべての女性への応援小説。[出版社Website作品紹介より]
『老後の資金がありません』などの垣谷氏の新刊です。

女性に対しての「クリスマスケーキ理論」と言うものがまことしやかにうたわれていたころと比べると、某結婚情報誌CMで秀逸とも言われたコピーの中にあったように「結婚しなくても幸せになれるこの時代・・・」なはずなのに、裏を返せば、独り身であればあれやこれやといわれる可能性はまだまだ大きく「余計なお世話じゃ・・・」とうそぶいてみたくもなることも・・・。

過去に比べたら随分と便利で生き易くなった世の中のようでいて、案外そうでもなく、むしろ先行きの見えない大きな不安がはびこる世の中で、バリキャリである主人公の思わぬ妊娠から拡がっていく波紋は、

さまざまな地位が確立してきたかのようで、案外まだまだそうでもない女性の社会進出。(かと言って、男性社会もなかなか生きにくそうで。)
シングルであるなしに関わらずのワンオペ育児の実態。
一人目のみならず二人目にも起こり得る不妊における事情。
高齢化に伴う介護問題。
パワハラ、モラハラ、セクハラ、アカハラなどなど、様々なハラスメント。
SNSなどによる致命的な攻撃。

数えあがるときりがないほどの現在の社会のさまざまな問題が浮き彫りになり、一見自分には関係なさそうでも繋がっている実態にふと考えさせられることもあるかと思います。

物語が進むにつれて、一つ一つの小さな人情の積み重ねからハッと気づかされる解決への糸口は、まだまだこの世の中捨てたもんじゃない、もう少しがんばってみようか、と、ほんの少しの勇気を分けてもらえるかもしれません。

「すべての女性への応援小説」と記されてはいますが、是非男性のみなさまにも呼んだご感想を聞いてみたいと思う物語です。

 (M)


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# by 75bs | 2018-08-16 12:43 | 【おすすめ/小説等】 | Comments(0)

おすすめ本をご紹介しています。 担当:平日午前中勤務・M


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